境界確認測量が1か月でも早く完了することができる、有効な方法とは

不動産業者さんにとって、不動産取引はなるべく早く行いたい、とお思いですよね。
だけど一筋縄ではいかない…
なぜなら、土地家屋調査士が行う測量業務のひとつ、「境界確認測量」がすんなりと終らずやきもきしてしまう。
境界確認測量が不動産取引の足を引っ張ってしまう事実も多いです。
そのキモとなる「近隣所有者さんとの境界立会い」は、土地家屋調査士としては細心の注意を払います。

今回は、どのようにして少しでも早く境界確認を完了し、取引に移行できるか、を考えていきたいと思います。

「第一印象」の良し悪しが境界確定の完了を左右する

境界確認の測量業務を行っていますと、どうしてもお時間がかかってしまうことがあります。
道路境界の場合は、役所の決済があるので仕方がない部分もあるのですが、ズルズルとお時間がかかってしまう理由は、ずばり「近隣所有者さん」の影響が大きいです。

そもそも近隣所有者さんと境界立会いにすらこぎつけない、ということが時間がかかってしまう理由だったりします。
あ、もちろん、境界立会いに応じて頂き、そのうえで依頼者と隣人との境界線自体の認識の相違により、確認したけど同意が得られない場合もありますが、それはそれで、お互いの意思、意見が明確であり、理由もはっきりしているので次の手を考案する事が出来ます。

しかし、近隣所有者さんと境界立会いにすらこぎつけない場合は、そこからの挽回はなかなか難しかったりします。

ですので、私はなるべくそのようにならないように、一番気を付けていることがあります。

スピーディーに業務を完了するたったひとつの方法
それが、「あいさつ」です。

境界立会いは土地家屋調査士として細心の注意を払いますが、特に、一番最初に行う「あいさつ」が一番気を遣います。
ここで変な印象を与えてしまうと、境界確認書へのご署名ご捺印を頂けるどころか、立会いにさえ協力を得られない可能性もあるからです。

私の中では
「隣人とのあいさつを制すれば、立会いも制する」
と思って近隣の方たちと接しています。

心理学者が唱えた「ファミリア・ストレンジャー」とは?

ここで少し、ご近所さんの心理的要素をお伝えしたいと思います。

僕が幼少の頃、平屋アパートの長屋暮らしでした。
あまり記憶はないですが、うちの両親とご近所さんとは持ちつ持たれつ、良好なコミュニケーションを取っていたと思います。
夕飯が余ればお裾分けをしたり、逆に何か頂いたり…
押し付けがましくなく、そうかといって、謙虚すぎでもなく、それこそ程よい距離感で近隣とのお付き合いをしていた印象が残っています。

しかし、現在では、お隣さんとお話したことがない方が本当に多いです。
お話しどころか、面識すらなく、お隣さんの顔を見ても誰だかわからない、
同じマンションやアパートで、エレベーターやエントランスで良く見かける顔なのに、おしゃべりどころか名前すら知らない、なんてことが当たり前のようになってきました。

アメリカの心理学者ミルグラムは、ご近所のような身近な空間にいて、顔は知っているけどお話ししたことすらない他人「ファミリア・ストレンジャー(見慣れた他人)」が、大都市にはたくさんいると考えました。
顔は知っているのに話はしない。
これって、マイナスに考えがちな人は
「冷たい人だなぁ」
と、何の根拠もなく一方的に悪い印象で思い込んでしまう可能性があります。
ファミリア・ストレンジャーは好ましくない印象を持たれやすいのです。

しかし、実はファミリア・ストレンジャーの良い部分もあるのです。
そのきっかけが、災害等のアクシデントです。
1977年にニューヨークで大停電が発生した際、お互いファミリア・ストレンジャーだった人同士が、話し合ったり、物々交換したり、助け合ったりしたそうです。
日本でも、阪神大震災、東日本大震災や、熊本の地震など、災害時になると「絆」が生まれます。
「絆」の根幹は、間違いなく近隣住民同士から派生しています。
これはホントに素晴らしいことだと思います。

「他力」のすさまじいエネルギーが「絆」を生み出す

本当は皆さん、ご近所と交流や親睦を図りたい気持ちは無意識に感じている。
ファミリア・ストレンジャーに関しては、個々にモヤモヤ感を持っているのかもしれません。
なので、ご近所のコミュニケーションとは、実は「待ち」の人間関係なのでは?と個人的に思っている次第です。
いざという時に、良い意味での「頼る」「助け合う」が個々に合致した際に発する「他力」のすさまじいエネルギーが「絆」を生み出していると感じています。

そう考えると、すごく不謹慎な言い方に聞こえてしまったら大変恐縮ですが、
身に降りかかる天災やアクシデントは、ファミリア・ストレンジャーの方々が心に持っている皆さんとの絆に気づくギフトなのかもしれませんね。

境界確認の最初の「近隣あいさつ」で大切な3つのこと

で、ここから本題に戻りますが、心理学者ミルグラム曰く、ご近所の方々が無意識に感じている「ファミリア・ストレンジャー(見慣れた他人)」に対する悪い印象を一気にひっくり返そうとしているのが、ファーストコンタクトである「あいさつ」なんです。

ご近所さんが個々に感じている「お隣の方とは、どちらかというと親睦を図っておいたほうが良いかも」という心理に対して、丁寧にアプローチしていくのです。

境界確認の「あいさつ」とは、次の3つの要素の事を言います。
・「今回、Aさん所有の土地の測量を行うことになりました平田です」という「自己紹介」
・「測量に入るにあたって、現場近辺をウロウロさせて頂きます」という「おことわり」
・「後日、土地境界線のお立会確認をお願いします」という「お願い事」

この3つを近隣の方々に「心を込めて」お伝えいたします。
特に、一番大切な境界立会いの「お願い事」は、
「境界線のトラブルを未然に防ぐ目的であるので、お互いにメリットがあります」という旨を事前にお伝えして、近隣の方々も土地境界で今後もできればトラブルなんか起こしたくない、ということに触れたりしています。

「顔見知り」が第三者との距離感を近づける

営業の世界にも「紹介営業」というものがあります。
お知り合いにお願して、キーマンをご紹介して頂くものです。
顔見知りの方のお力を拝借する事は、人と人とを結びつける手っ取り早い方法です。

境界立会いの挨拶の際にも応用できます。
一番良いあいさつは、依頼者と一緒に近隣所有者さん達とあいさつ回りに付き合って頂く事です。
依頼者に近隣の方たちを紹介してもらうのです。
土地家屋調査士と隣人の方たちは初対面です。
いきなり知らない人があいさつに来られても、人によっては警戒するのも当然です。

しかし、地主さんである依頼者さんが一緒にいるだけで、知らない者同士の距離感が短時間で一気に縮まります。

まとめ

私は境界確認測量で一番大切なことは、近隣所有者さん達への最初の挨拶だと思っています。
これから敷地をウロウロさせて頂きますし、後日境界立会いもお願いする身としては、やはり「第一印象」に注意しています。

この「第一印象」を悪くしてしまうと、ココからの挽回は本当に大変です。
なので、いかに見ず知らずの近隣の方々との短期間で距離感を詰めることができるか?
それが、ファーストアプローチである「あいさつ」だと思っています。
これが非常にうまく行くと、ココからの業務が短期間でスムーズに進むのです。

もし、今、隣人の方とうまくコミュニケーションが取れない状況で、不動産取引等に支障をきたしている状態だとしたら、土地家屋調査士、依頼者、紹介者、買主等と一緒に丁寧にごあいさつに伺ってみるのも一つの方法ですね。
なぜ境界確認を行うのかを丁寧にご説明し、こちらの意見を一方的に押し付けるのではなく、隣人のご意見を尊重しながらお話を伺うことによって、何かしらの光が必ず見えてきます。

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